携帯電話の基地局設置をめぐるトラブルで、電話会社が住民に対して基地局に関する情報を開示しないことが各地で問題になっている。基地局からはマイクロ波(将来的にはミリ波)が放射されるので、周辺住民は、いやおうなしにマイクロ波による人体影響を受ける。
たとえ電磁波が微弱であっても、1日に24時間、365日、延々とマイクロ波のシャワーを浴び続ける。一旦、基地局が設置されると少なくとも10年ぐらいは、移転することがないので、周辺住民は常にマイクロ波に被曝する。
当然、住民としては、少なくとも自分たちが浴びる電磁波に関する情報を詳細に知りたい。そこで電話会社に、基地局に関する情報を開示するように申し入れるが、筆者が取材した限りでは、電話会社は企業秘密を理由に、ほとんど情報開示に応じていない。
企業活動を監視する責任がある自治体も、企業秘密を優先して開示には応じない。電磁波や化学物質には、「闘値」がないことを説明しても、「総務省の規制値を守ってる限り、規制できない」とAIのような回答しか返ってこない。
※ある作用によって生体に反応がおこる場合、反応をおこすのに必要なその作用の最小の強度をいう。(出典:日本大百科全書(ニッポニカ)の解説)
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次に紹介する書簡は、楽天モバイルと住民の間で交わされたものだ。川崎市で起きた基地局問題のケースである。
楽天モバイルは、2021年4月、Hさん家族が住む賃貸マンションの頭上に基地局を設置した。Hさんは設置に反対したが、楽天は計画を進めた。賃貸マンションなので、オーナーの意向が優先して、工事を完了した。
それでもHさんは、楽天モバイルに対して次のように書面で情報開示を求めた。
携帯電話の基地局についてご質問ですが、現在基地局から電磁波は流れ始めたのでしょうか。
最近、夜にアンテナを確認すると緑色の小さなランプが点灯しているため、すでに操業されたか確認したく存じます。
これに対して、楽天モバイルは次のように回答した。
稼働開始時期の大まかな目安については既にお伝えしております。
しかし、その具体的な日時や稼働の実際についてまでお答えすることは致しかねます。
Hさんが再度情報開示を求めたところ、楽天モバイルは次のように回答した。
基地局の運用状況につきましては、お答え致しかねます。
申し訳ございませんがご認識の程何卒宜しくお願い致します。
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電話会社は、住民の間に健康被害が発生しても、総務省が責任を取ってくれるという計算があるのではないか。被害を受けた住民のひとりは次のように話している。
「電話会社は、基地局の設置は無線通信網の充実をはかるための社会貢献などと言っていますが、結局はお金儲けですよ。住民に迷惑をかけてまで、電話ビジネスを展開したいということでしょう。少なくとも説明義務ぐらいは果たしてほしいです」