2019年、電磁波の被害が急増するおそれ 懸念される第5世代移動通信(5G)のリスクとは (1)

執筆者:加藤やすこ(環境ジャーナリストいの環境ネットワーク代表)

(1)便利になるが健康被害も増加?
2019年夏以降、携帯電話会社は第5世代移動通信システム(5G)の運用を開始し、現在の第4世代移動通信システム(4G)よりも、さらに短時間で大容量のデータを送受信できるようになる。例えば、5Gでは2時間の映画を3秒でダウンロードできるという。

タイムラグが非常に少ないので、離れた場所にある工事車両の遠隔操作や、車の自動運転に利用できるなど、利便性がアピールされているが、問題もある。

今までに使われてこなかった28GHz(ギガヘルツ)帯という非常に高い周波数帯を使うことや、通信方式の変化によって被曝量が劇的に増加し、環境や人体に深刻な影響を与えると懸念されている。

日本ではほとんど報道されていないが、2000年代に入ってから携帯電話基地局周辺では、不眠や頭痛、耳鳴り、めまい、吐き気などの体調不良を訴える人が有意に多いことが、フランス、ドイツ、スペイン、ポーランド、イラン、エジプトなど各国の疫学調査で報告されてきた。

ベルギーの自然・森林調査研究所は2006年、住宅地でイエスズメの生息調査を行い、電磁波の強い地域ではイエスズメの生息数が減ったと報告している。電力密度が0.004μW/㎠(マイクロワット/平方センチメートル)の住宅地では平均で1.9羽だったが、携帯電話基地局に近い住宅地では0.016μW/㎠と、電力密度が4倍高く、イエスズメは平均0.8羽しかいなかった。

世界保健機関(WHO)でさまざまな物質の発がん性を調べる国際がん研究機関( IARC)は、2011年、無線周波数電磁場(携帯電話、スマートフォン、Wi-Fi、スマートメーター 、テレビ、ラジオ、レーダーなどに使われる帯域の電磁場)を「発がん性の可能性がある」と認めている。

このように、すでに人間や動物への影響が報告されているわけだが、5Gでは携帯電話基地局の数が大幅に増加し通信方式も変わる。5Gでは28GHz帯も使うが、電磁波は周波数が高くなるほど波長が短くなり、建物などの障害物の影響を受けやすくなるため、到達範囲が狭くなる。そのため5Gでは、「マクロセル」と呼ばれる広い範囲の通信には従来の4Gを使い、高い周波数帯を利用する「スモールセル」では約100mごとに基地局を設置することになる。

海外では街灯やバスシェルター(屋根付きのバス停)に基地局が設置されており、日本でも街灯と一体になった基地局が開発されている。NTTドコモが開発したマンホール型基地局は、道路の地下70cmに基地局を埋設し、樹脂製のマンホール蓋で覆うもので、アンテナから地表までの距離は10cmしかない。

5Gが始まれば、歩行者や周辺住民は街灯やバスシェルター、マンホールなどから発生する電磁波に近距離で被曝することになる。そのため、2017年には108か国、270人の科学者が「無線周波数電磁波は人類や環境にとって有害なことが証明されている」として、5Gの安全性が確認されるまで導入しないよう欧州連合(EU)に求めている。とくに子どもや妊婦(胎児)、高齢者への影響が懸念されており、無線の代わりに有線デジタル通信を行うことなども要望された。

(2)電磁波の健康影響とは
これらの電磁波に被曝すると、酸化ストレス、DNA損傷、免疫異常、自律神経系の異常、ホルモンの異常、心臓血管系の障害、認識機能の異常などが発生し、神経側索硬化症(ALS)などの神経変性疾患や、脳腫瘍などのがん、流産の増加、精子数の減少など生殖機能障害につながると指摘されている。

近年は発達障害との関連性を指摘する研究も増えている。デンマークの妊婦と子どもを対象にした追跡調査では、妊娠中と出産後に母親が携帯電を使うと、子どもが7歳になった時点で発達障害を発症するリスクが1.5倍高いと報告されている。また妊娠中に携帯電話を1日に7回以上使うと、将来、子どもが偏頭痛になるリスクは1.89倍高くなるという研究もある。

電磁波過敏症という新しい病気も、携帯電話の普及とともに世界的に増えている。家電製品や送電線、Wi-Fiや携帯電話などの電磁波に被曝すると、頭痛や極度の疲労感、めまい、目が焼けるような感覚、血圧の異常、耳鳴り、耳への圧迫感、動悸(どうき)、吐き気、集中困難、記憶力の低下、多動、イライラ、不安感などさまざまな症状が起きる。電磁波発生源から離れれば症状は収まるが、近づくと再発するという特徴がある。

現代社会では、学校や職場、スーパーや病院、交通機関などいたるところにWi-Fiが設置されているので、一度発症すると日常生活にも支障が出て、退職や退学を余儀なくされる人も少なくない。電磁波過敏症発症者にとって、電磁波は社会参加を阻むバリア(社会的な障壁)になっているのだ。

ドイツやスウェーデンでは人口の約9%、イギリスでは約11%、台湾とオーストリアでは13.3%が電磁波過敏症を発症していると報告されている。早稲田応用脳科学研究所の招聘研究員、北條祥子博士の調査によると、日本の有病率は3.0〜5.7%で、電磁波過敏症発症者の約80%は化学物質過敏症も併発している。

オーストリア医師会は、電磁波による健康問題に対応するため、最新の知見に基づく診断と治療に関するガイドラインを2012年に策定した。血圧や心拍率の測定、血液検査や尿検査の項目などを具体的に示し、電磁波と体調不良の関係を調べるための問診票も開発している。この問診票では家庭や職場での携帯電話やWi-Fi、コードレス電話の使用時間や、周辺に携帯電話基地局があるかどうかを尋ね、必要に応じて電磁波測定を行うこと、電磁波被曝量を減らす電磁波対策を具体的に示している(コラム参照)。

 

 

(3)諸外国よりはるかに緩い日本の規制
2011年、欧州評議会(CoE)は、電磁波過敏症を障害として扱うよう加盟47か国に勧告し、環境因子の影響を受けやすい人や子どもを守るために、被曝基準値を引き下げるよう求めている。総務省の電波防護指針では、WiーFiなどで利用されている2GHz帯に対し、電力密度を1000μW/㎠まで認めているが、CoEは当面の目標として0.1μW/㎠を、将来的にはさらに引き下げて0.01μW/㎠にするよう求めている(表1)。

一方、オーストリア医師会のガイドラインでは、「正常範囲内」を0. 0001μW/㎠以下とし、0.1μW/㎠以上だと「正常よりはるかに高い」と分類している。総務省の指針値(2GHz帯について定められた1000μW/㎠)と比べると、オーストリア医師会の正常範囲内とされた値は1千万分の1にあたる。

オーストリア医師会に確認したところ、このガイドライン値は「1日に4時間以上過ごす場所での、電磁波の総量に対する指針値」ということだった。私たちの周りにはさまざまな周波数帯の無線周波数電磁波が溢れているが、日本では総量に対する規制は存在しない。

ちなみにスウェーデンのオレブロ大学の研究者らは、2015年にストックホルム中央鉄道駅で無線周波数電磁波を測定し、駅構内の携帯電話基地局の周辺で9.5μW/㎠あったと報告している。

私たちの生活環境は、すでにさまざまな無線周波数電磁波が溢れ、気づかないうちに影響を受けている。環境因子の影響を受けやすい子どもたちを守るためにも、より安全な通信方法を選びたいものだ。

【出典・リベラル21】

 

 

 

 

 

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